◆ドゥーラ5代血統表

ドゥーラ


生産・育成馬であるドゥーラ号で札幌2歳ステークスを勝たせていただきました。

これまで配合の場面でお任せいただいたり、育成の場面でお任せいただく事で幾多の名馬に関わる機会に恵まれてきましたが、自分達の手でお産を介助し、取り出したドゥーラの勝利は格別の喜びがあります。

相応の手応えは感じていたものの、生産事業を本格的にスタートして2世代目でJRAの重賞を勝てたのはかなりのスピード記録だと思いますが、幾多の幸運、そしてドゥーラを購買いただいた馬主様、関係者様とのご縁に恵まれての勝利です。感謝するばかりです。

ここに至って実感するのは、生産者という仕事は、生命を生み出すという大変な苦労とやりがいのある仕事だということです。長年、育成事業者としてG1馬、重賞勝ち馬を手掛けさせていただきましたが、競馬の醍醐味は「配合→生産→中期育成→育成→レース」と一貫して携わる所にあり、一貫してはじめて見えてくる世界があります。

サラブレッドの生産者としてやるべき事の積み重ねの一つとして、配合研究にも力を入れ、40数年間の蓄積と熟慮の末に生産した一頭がドゥーラであるとも言えます。

ドゥーラの誕生を説明するには、まず母イシスの導入から始まります。イシスは2018年1月の繁殖セールで購買した繁殖牝馬です。

当時はさほど「キングヘイローの牝馬が走る」とは話題になっておらず、G3勝ち馬クリスマスの半妹が若くして市場に出ているという状況でしたが、何よりイシスの祖母ターミナルフラワーの活力あふれる血統に魅力を感じました。

ターミナルフラワーの父ソルトレイク Salt Lake(米G1ホープフルステークス勝ち馬)、母の父キャノネイド Cannonade(1974年のケンタッキーダービー馬)。日本では珍しい血統ですが、どちらも自分好みの血統でした。
ソルトレイクはデピュティミニスター Deputy Ministerの直仔である点、キャノネイドは祖母がコスマー Cosmahである点、に血統の魅力があります。

ドゥーラの母イシスはブラックタイプ的には近親に2勝馬もあまりいない、いわゆる「薄い牝系」ですが、セールの現場で馬をチェックした所、サイズも十分、馬体に欠陥もなく、その体の造りは自分好みで魅力を感じました。

ドゥーラの母の父にあたるキングヘイローは「あのグッバイヘイローの息子」という超良血にして、牝系もレディービーグッド Lady Be Goodと大変優れています。最近だと、タイトルホルダーの母の父モチベイター Motivator(英ダービー馬)も同牝系です。

グランデファームはキングヘイローという種牡馬と不思議と相性が良く、代表産駒ローレルゲレイロも育成しましたし、村田牧場さん生産・所有のゼフィランサス(後にディープボンドの母となる)も育成で携わりました。(ゼフィランサスは条件馬止まりでしたが育成時代に能力は確かに感じていたので、村田さんには「ゼフィランサスは絶対他所に譲り渡したらいけないよ」と当時アドバイスしていたのを覚えています。)

自分の中で実際に経験した事をベースに直感が働き、この繁殖なら祖母ターミナルフラワーの血統が本来持っている活力を生かせば面白い配合ができると狙いをつけたのです。

常々言葉にしていますが、サラブレッドは“字の太さ(ブラックタイプの豪華さ)“では走りません。世界中で馬のセリは行われていますが、キーンランドでもタタソールズでもブック1(いわゆる良血馬を集めた高額セール)で取引された馬は悲しくなるほど成績が出ません。

サラブレッドは「配合のテクニック」と、その馬が持っている「馬体」で走ります。その揺るがない信念の元に「配合→生産→中期育成→育成→レース」と一貫して手掛け、「これなら過去育成した名馬たちと遜色ない」と自信を持って送り出せた馬で、無事に結果が出せたことは感慨深いものがあります。

[名牝コスマー]
ヘイロー Haloの母コスマーは、娘にトスマー Tosmah(米国最優秀3歳牝馬)、孫にフローレスリー Flawlessly(米国芝部門最優秀古馬牝馬×2回)など歴史的名牝を輩出していますが、現代では「ヘイロー以外に」コスマーの存在を見つけることは非常に珍しくなっています。

つまりコスマークロスは簡単には作れません。日本ではドゥーラの牝系ターミナルフラワー系の他には、下河辺牧場のロイヤルコスマーの系統(2022年小倉2歳S勝ち馬ロンドンプランが該当)あたりにしかできない配合です。

ドゥーラの母イシスは「父がキングヘイロー、母の父がサンデーサイレンス系(ステイゴールド)、母系にキャノネイドを含む」ことから、ヘイローを2本、コスマーを2本持っていました。この特徴を生かせばサンデーサイレンスクロスは一段と強力になります。

ドゥーラの血統表をよく御覧いただければ発見できると思いますが、ドゥラメンテを配合することで「サンデーサイレンス→ヘイロ Halo→母コスマー Cosmah→母アルマームード Almahmoud→マームード Mahmoud」とクロスを5代連続して継続させてあります。

特に技巧を施したのは、サンデーサイレンス、ヘイロー、コスマーについては「息子と娘を経由したクロス」を3代連続にしてある部分です。

一般的なサンデーサイレンスクロスの場合、この「コスマーの部分」で他から補給がないので、クロスが継続する形になりません。

ここをつなげることに「意味がある」と信じ、イシスにはドゥラメンテを3年連続配合しました。(「これ」と決めた配合は3回試せというのはニジンスキーを生産したE・P・テイラーの教えだったと思います)

この「配合の形」は世界を探してもなかなか代案は見つからないでしょう。この「こだわり」でドゥーラは誕生したともいえます。

ただし、いかに最高と自画自賛できる「配合」だからといって、想像通りにホームランをかっ飛ばすような逸材が誕生する確率は(E・P・テイラーの説に従うと)3頭に1頭なのかもしれません。競走馬は工業製品ではなく生き物だからです。
「血統とは何か、配合とは何か」というのは、少年時代から40数年続けてきたライフワークとしてずっと考え続けてきましたが、自分なりに長年経験した末に、配合とは百発百中を実現する魔法ではなく、確率を1割2割アップさせるものではないかと考えるようになりました。

E・P・テイラーの格言は、「これだ!と思った配合でも、本当に走るのは3頭に1頭かもしれないぞ」という風に読み替えることもできます。それをパーセントに換算すると33%です。
DNA配列は出たとこ勝負、まさに福引のようなもので偶然決まりますから、何がいつどこに33%なのかは明言できませんが、数字だけで見れば「3頭生産して1頭」、「6頭生産して2頭」、「10頭生産して3~4頭」。これが「配合に手を加えた上での走る馬の確率」の真実だろう、というのは、カナダの伝説的生産者の格言というだけでなく、私の生産者体験を踏まえても納得できる推測値です。

今も昔も競馬業界では、ほとんどの関係者が「リーディング上位の種牡馬、人気の血統」といった、「ブランド」に右往左往して、それに応じて2億円だ5億円だと大金が動いています。
しかしカタログにどれだけ太いブラックタイプが豪華に掲載されていようとも、値段通りに走る馬である確率が10割というのはありえません。それどころか(E・P・テイラーが唱えた)3割を超える事もまずありません。

このような「〇〇産駒だから」と後付けの保証欲しさに右往左往して生産された競走馬が本当に値段通りに走るのは1割にもならないでしょう。

もしエピファネイアだシルバーステートだ、〇〇の弟だといういわゆる良血という理由のみで3割を超える馬が一級品の競走成績を残していたら、競馬というゲームのバランスは崩れて殆どの牧場は倒産しているはずです。

例えば、ロードカナロア産駒の2022年セリ取引平均価格は7655万円と高騰していますが、2022年現在までの全産駒平均獲得賞金は1400万円程、というのが現実です。

このロードカナロア産駒915頭を調べてみると、2022年セリ取引平均価格7655万円に対して、これまで7000万円を超える賞金を獲得できたロードカナロア産駒は(上位の1割どころか)上位49頭。つまり、投資額が回収できるロードカナロア産駒は5.3%なのです。

(ロードカナロアはまだ優秀な部類で、実態に見合わない人気種牡馬は「ほぼ全て」と言って良いです。人気種牡馬という「切り口」の買い物は、そもそもそういうものなのです。)

さて、練りに練った配合で「33%」という、私がサラブレッドの配合に何十年と携わって感じた推測値は、「66%もハズレが出るようでは話にならない」と見ることもできますが、33%を野球に当てはめれば「3割を優に超える打率」と見ることもできます。(2021年パ・リーグ首位打者は打率.339の吉田正尚でした。)

野球の世界で打率3割を超える強打者が市場に出たら間違いなく複数チームによる争奪戦が起きるでしょう。それが勝負を決定づける戦力になるからです。まさか「66%もアウトになりやがって」などと罵声を浴びせる人はいません。

それでは、野球の世界で(3割打てますよという選手がいるにも関わらず)打率1割以下の選手を巡って争奪戦が起きる…でしょうか? 「〇〇産駒だから」というブランド欲しさの大騒ぎは実際にはそういうことです。

競馬の世界は、たまに不可思議な光景が繰り広げられています。

今年も7月8月と1歳セリが行われていますが、馬の造りには何の素質も感じられない平凡な馬が、「人気種牡馬」という看板だけで次々と高額落札されていました。中には獣医学的に致命的な欠陥のある馬も含まれていたのは驚きでした。


[デピュティミニスターとノーザンテースト]
第二のポイントは最初に挙げた「デピュティミニスター Deputy Minister」の存在です。米国リーディングサイアーでもあるデピュティミニスターは現在広く普及している血ですが、冷静に見て下さい。カナダ産のサラブレッドで、米国のG1を勝ち、米国リーディングサイアーなのです。
カナダ産サラブレッドとは、日本で言えば青森県産馬のようなもので、それがG1馬となり、リーディングサイアーなのですから、大変高い能力、異端の能力の持ち主であります。このように「異端の血統背景」「異端の生産地」から出た名馬は血統として価値があると私は捉えます。

デピュティミニスターは米国で一気に広がったヴァイスリージェント Vice Regent系なのですが、「ヴァイスリージェントと非常に近い血統=*ノーザンテースト」でもあります。
*ノーザンテーストとヴァイスリージェントは「同じ牧場(カナダ・ウインドフィールズ牧場)で生まれた、1歳違いのノーザンダンサー Northern Dancer産駒」なので、当然と言える部分もあるのですが、
・*ノーザンテースト 父ノーザンダンサー、母の父の母ビクトリアナ Vitoriana
・ヴァイスリージェント 父ノーザンダンサー、祖母ビクトリアナVitoriana
と全兄弟ほどではないが、確実に、固有の、血の共通点があります。

つまり*ノーザンテーストとヴァイスリージェントは、セットで用いると、クロスのようでクロスでない、擬似的にクロスに近い配合になります。ドゥーラの母イシスは「クロスのようでクロスでない」この形を元々備えていました。(*ノーザンテーストとヴァイスリージェントのニックスと呼ぶ人もいるでしょう)

ここに*ノーザンテーストを加えてクロスにしたら…、という狙いで、私はドゥラメンテを選びました。

ただのノーザンテーストクロスではない、これもドゥーラの配合の特徴になる訳です。

大きな部分ではこの2点ですが、その他にも
・サンクタス Sunctusの7×6クロス
・バックパサー Buckpasser - トムフール Tom Foolの継続クロス(7×6)
・リボー Ribot(8×7)とプリンスシュヴァリエ Prince Chevarier(8・8×8)のクロス
など、細かい部分で、自分好みの、強い影響力のあるクロスを加えています。(特にリボーとプリンスシュヴァリエの2頭は、非常に似た血統の持ち主である事を発見しており、血統研究を始めたばかりの方々にぜひ覚えておいて欲しい血統です。クラシックディスタンスで力を発揮する、長打狙いができるクロスだと思っています。)

サンクタスは仏系、バックパサーは米系、リボーは伊系、プリンスシュヴァリエは仏系と、ドゥーラの血統に現れるクロスは多国籍でバラエティに富んでいます。この状態こそ「活力ある血統」であると考えています。

(個人的にサンクタス-ディクタスの系統には、イクノディクタスを通してお世話になった思いが強いので、この血統を生かした配合は今後も続けて狙っていきたいと考えています。)

ドゥーラは近親配合なので単純のようでいて、なおかつ深みを持たせる事に成功した配合であり、ドゥラメンテ産駒の配合としても上質な内容を持たせてあります。

中日ドラゴンズで215勝した名投手杉下茂は、カーブとフォークの変化球2種類で選手生活を送ったそうですが、私の配合テクニックは今回ドゥーラの配合で紹介したものだけが「持ち玉」という訳ではありません。

現在MLBで活躍するダルビッシュ有投手は7種類以上、大谷翔平投手は9種類もの変化球を使い分けるそうですが、サラブレッドの配合もメジャーリーガーを意識しないと現代では勝てないでしょう。

この引き出しの使い分けこそが、これまでの配合研究の価値だと思って毎年生産に取り組んでいます。

種牡馬としてのドゥラメンテは、面白い配合・良い配合を作りやすい、優秀かつ使い勝手の良い種牡馬でしたので、数少ない世代からも優秀な競走馬が出てきています。

ドゥーラの最大のライバルは、新馬戦で上がり3ハロン31秒台を叩き出したリバティアイランドだと思いますが、この馬も同じドゥラメンテ産駒であり、優秀な配合だと見ています。
この2頭がぶつかり合う時は、どちらも配合、馬体、レースパフォーマンスと申し分ない存在ですから、競馬ファンに喜んでもらえるような熱いレースになるだろうと期待しています。

◆衣斐浩【配合の深淵】
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◇競馬通信社◇
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9月8日に大井で行われたS3のアフター5スター賞、出馬表を見ていて面白い馬が出走していたのを知った。

オリジネイター、8歳馬でその戦績は23戦19勝2着2回という馬だ。

前走はトライアルを1番人気で勝っている。

よほど強い馬かと思ったが一応印は付いているが本命対抗という人ではなさそうだ。

成績を調べると3歳の春に中央でデビュー、未勝利を10、2着、8月に中央を抹消して大井に移籍した。

しかし長期休養に入り大井でのデビューは1年後の4歳の6月、2連勝し5カ月休養し勝ってまた休養、4カ月休んで4連勝、半年休んで6歳の2月にまた勝った。

これで9連勝。クラスはC2からC1に上がったが休養を挟んでいるのでまたC2に下がった。

その後は競走中止、1着、2着のあとトライアルまで10連勝でアフター5スター賞に出走となったのである。

クラスはその10連勝のうち6連勝までがC級でありここまでは大井で17戦15勝2着1回という見た目は抜群の成績である。

しかしここでクラスはようやくB3に上がった。その後B3特別を連勝、B2特別を勝ってA2下特別のトライアルも勝って10連勝となったのである。

それにしてもこれだけ勝ってもクラスがなかなか上がらないのは賞金が安いためだ。

C2の1着賞金は100万、C1は120万でありこの低さではC級のままというわけだ。

B3特別は240万、B2特別にしても270万とやはり低い。トライアルは500万である。

アフター5スター賞では番組賞金の低さから53キロで出走できたため3番人気となったが8着に敗れた。

やはり弱い馬にいくら勝っても重賞ではなかなか通用できないということだろうか。

このような成績を上げているだけにファンはいるようでデータベースへの投書は多いようだった。



沢田準【競馬を楽しく】
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◇競馬通信社
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セントウルSの有力馬6頭の配合分析◆青木義明の競馬一直線



おはようございます

今週から競馬は中央場所に戻りました
より楽しい競馬が楽しめそうです

重賞レースも3本
そのうちの一つ セントウルSの有力馬6頭の配合分析を行いました
人気の2頭で決まるか
割って入る馬はいるか

ご参考にどうぞ

【セントウルS】
血統評論家・青木義明の重賞展望
有力馬6頭の配合解説
https://youtu.be/NHytuohUYjg

配合からみた上位馬6頭を5代血統表と共に解説
長所と欠点を指摘して馬券検討の参考に供します

#セントウルS #配合解説 #競馬予想

おはようございます

秋華賞トライアル/紫苑Sの有力馬6頭の配合分析をアップしました
人気のスタニングローズの死角とは
青木配合馬ニシノラブウインクの勝てる条件とは
とっておきの穴馬とは

【紫苑S】
血統評論家・青木義明の重賞展望
https://youtu.be/RR-mzTmrOYQ


#紫苑S #配合解説 #競馬予想

【ケイエスミラクル&ヤマニンゼファー編】◆青木義明の競馬一直線



舞台化が決まった「ウマ娘」はますます意気軒高です
そのキャスト紹介の後編が完成しました


【ウマ娘】
競馬評論家・青木義明の本馬解説
【ケイエスミラクル&ヤマニンゼファー編】
https://youtu.be/SvkAkqp2uno

予定されている舞台の主要キャラクターのモデル馬解説です。
ぜひご覧ください。

#ゼンノロブロイの配合的ポイント

母の父マイニング
そして その母 I Pass の特異な血統構成にあることは歴然

配合の解明に関心があるなら その5代血統表を眺めてみて下さい

血統評論家・青木義明の雑談けいば
2022.9.4『ゼンノロブロイを偲んで』
https://youtu.be/npIrocesxXE

◆マイニングの母 I Pass 5代血統表

I Pass


#ゼンノロブロイは5代アウトクロス

配合のポイントは
母の父マイニング
そして その母 I Pass の特異な血統構成にある
その5代血統表から学ぶことができれば
貴方の配合研究に光が差す

血統評論家・青木義明の雑談けいば
2022.9.4『ゼンノロブロイを偲んで』
https://youtu.be/npIrocesxXE

血統評論家・青木義明の雑談けいば
2022.9.4『ゼンノロブロイを偲んで』
https://youtu.be/npIrocesxXE

2022年9月2日 22歳で永眠
関係者のコメント紹介と配合の要点を簡潔に説明


土曜夜10時前にゆったりと見るのは「土曜名馬座」、JRA提供で制作されているPRを兼ねた5分番組だ。これがよくできていて、ついじっくりと見入ってしまう。グリーンチャンネルの「栄光の名馬たち」もいいが、5分にギュッと凝縮された形でその週の重賞を勝った名馬の足跡を振り返れる。

6月25日は宝塚記念を勝ったサイレンススズカ、敗戦を糧に武豊・南井克巳とのコンビで才能を開花させた快速馬だった。史上最強を疑わなかったエルコンドルパサーを破った毎日王冠を、思いがけずもう一度見れたのは本当に嬉しかった(エルコンドルパサー贔屓の自分にとってはヒールだったけれど)。

悲劇が襲った天皇賞秋は、3コーナーまで気持ちよく逃げる姿に「サイレンススズカ、故障発生!」の音声だけを被せる編集。瞼に焼き付いているあの瞬間を、画面で見ないで済んだ。古い話で恐縮だが、京都で散ったテンポイントと大井外回りの4コーナーで力尽きたツキノイチバンに掌を合わせた。

翌週はアグネスワールド。1999年のCBC賞の勝ち馬(当時は11月末に暮れのスプリンターズSの前哨戦という位置付けで行われていた)で全日本2歳優駿を勝ち、海外G1も2勝したワールドクラスの二刀流スーパーホースだった。3歳上の半兄ヒシアケボノもスプリンターズSを勝っている快速馬。

半兄はウッドマン、アグネスワールドはダンチヒの産駒で生産者がスピードにこだわり尽くした配合を追求していたのがよくわかる。高松宮記念とスプリンターズSに2回ずつ挑戦して、着差は0秒1〜0秒4と僅かだったが栄冠には手が届かずタイトルは海外の直線競馬で獲得。

国内で一番輝いたのは1999年7月の北九州短距離S(オープン特別)で、1分06秒5をマークした時だろう。ポンとハナを切ると21秒9→21秒4→23秒2のラップで、国内初の千二1分6秒台のレコードを樹立。野芝で時計が出やすい夏の小倉は、天性のスピードを生かすのにもってこいだった。

22年後の2021年に、やはり同じ夏の小倉でファストフォースが21秒6→21秒3→22秒8のラップで1分06秒0をマークしてレコードを塗り替えた。その秋にスプリンターズSを勝つピクシーナイトを押さえてのものだけに、余計に価値のあるものとなった。

その僅か1年後に3歳牝馬テイエムスパーダが、重賞初騎乗の今村聖奈騎手を背に1分05秒8のレコード。21秒4→21秒3→23秒1のラップを、泉下の名馬はどのように見ているのだろう。5分番組の余韻に浸りながら、土曜の夜はゆっくりと更けていく。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
http://bit.ly/17MDXV7

◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp


最近は外国のレースの中継が非常に増えてきた。

もちろん日本馬の外国のレースへの出走が多くなってきたことによるが、従来は日本馬の出走するG1レースが主体だったがG1ではないレースの中継もある。

先日にはステイフーリッシュが出走したG2のドーヴィル大賞が中継された。

5頭立てという出走頭数としては寂しいレースでありドーヴィル大賞という日本ではあまり知られていないレースはこれまででは中継されなかったレースだろう。

ステイフーリッシュはイギリスのブックメーカーのオッズで1番人気であり勝ってもらいたかった。

逃げて途中で他馬を引き離したときは楽勝かと思われたが最後は差されてしまった。

凱旋門賞では人気も低くさすがに苦しそうだ。

珍しかったのはスペイン調教馬が出走したことだ。スペインの競馬については日本ではほとんど知られていないが、以前にはグループレースが行われたことがある。

1994年から1996年にマドリッドとサンセバスティアンで2400のメートルのG3が各1レース行われた。

このスペイン調教馬はさすがに人気は低く最下位に敗れたがそれでもさほど差を付けられなかったのにはいささかびっくりさせられた。

ところでこのレースで興味があったのはドーヴィルのコースだ。

ドーヴィルでのレースはジャックルマロワ賞が放映されたがこの時ドーヴィルのコース図が紹介された。

芝の周回コースの内側にオールウエザーの周回コースがある。このコースには1コーナーと2コーナーの中間にシュートがある。

このシュートは芝のコースにかかっているがコース図では芝とクロスする部分はオールウエザーに書かれている。

JRAのコースでは芝からスタートしてダートに入るのだがドーヴィルはどうなのか。

スタートして1コーナーを回るとオールウエザーののシュートとクロスする。

確かにコース図の通りだ。驚かされたのはこのクロス部に内埒がないのである。ある間隔でパイロンが置かれているだけだ。

しかもカーブしている。日本なら当然移動柵を置くに決まっているのだが。



沢田準【競馬を楽しく】
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