今年に入って川崎の大ベテラン・森下博騎手が、「最高齢勝利記録」を更新した。スポーツ紙の扱いも大きかったし、照れ笑いを浮かべながらガッツポーズをする写真も掲載された。多摩川オープンを勝った時は63歳8ヶ月、あと1ヶ月で64歳になる。これまでも最高齢騎乗記録を黙々と更新していたが、やはり競馬は勝ってなんぼ。

的場文男騎手の「最高齢重賞勝利記録」を阻む可能性があるのは森下騎手だけ。多摩川オープンを勝ったトキノパイレーツはまだ4歳、マイル路線で重賞に手が届くだけの素質と将来性を持っている馬。同世代の山崎尋師に「あと5年乗れよ!」と言われて「無理だって!」とおどけたが、最高齢重賞勝利記録は強く意識している。

自身の今後について、「免許の更新は済ませました。でも今年度も乗って64歳までかな、腰も痛いし足も少し痺れてて。でも体のメンテナンスはやっているよ。レースに乗るときにはダッシュを3本やって、的ちゃんは自転車漕いでるみたいだけど俺も負けられないって。」と話す。

トキノパイレーツについては、「3歳の秋は調教をつけててもなんか噛み合ってなかったけど、4歳になってグンと良くなってくれた。手前の替え方も上手くなって、最後の伸びが違ってきた。トモなんかはまだ良くなる余地を残しているし、オーナーにはぜひこの馬が重賞を勝つところを見て欲しいね。」と高評価。

通算2675勝を挙げているものの、JRAのファンには馴染みが薄いかもしれない。改めて調べてみると、交流重賞は船橋のマリーンC(エフテーサッチ)、大井の東京盃(カガヤキローマン)、川崎の川崎記念(エスプリシーズ)の3勝。中でも、武豊のスターキングマンに4馬身差をつけた川崎記念はインパクトが大きかった。

個人的に森下騎手の腕の凄さを感じたのは、カガヤキローマンの東京盃だった。交流重賞・北海道スプリントCを勝って臨んだレースだったが、石崎隆之騎手が川島正行厩舎のサプライズパワーと差しあって森下騎手に騎乗依頼。芝のスプリンターズS3着の快速馬、ワシントンカラー以下を見事に押さえ込んで優勝してくれた。

全盛期の石崎隆之騎手と的場文男騎手が騎乗できず、回ってきた馬を何度となく勝たせて「森下マジック」と呼ばれた騎乗技術はいまだに健在。鮮やかな腕前を見せつけられるたびに、記録や数字の意味と無意味を思い知った。記録や数字とは無縁だった一人の騎手が、初めて記録に拘って恐らくは最後になる1年を戦おうとしている。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
http://bit.ly/17MDXV7

◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp