秋のG1シリーズが始まって、先週のスプリンターズSはタワーオブロンドンが優勝。短距離戦は「電撃の」という枕詞がつくように、一気呵成のスピード勝負というイメージがある。しかしジョッキーの多くは、「短距離戦の方が乗るのが難しい」と言っている。今月はスプリント戦について、船橋の伯楽・川島正行師(故人)の言葉を紹介しよう。

「短距離戦は起承転結が大事で、メリハリをつけて乗らないと勝てないぞ。」これは、愛息・川島正太郎騎手に繰り返し伝えてきたいわば「遺言」。地方競馬はJRAに比べて、千四以下のレースの比率が非常に高い。特に船橋はスプリント路線に力を入れていて、千・千二のレースが非常にたくさん組まれている。

8月の開催を例に取ると4日間48レースのうち、千・千二は合計28レースも組まれていた。船橋コースは3コーナーからスパイラルカーブで、川崎や浦和と比べると差しが決まりやすい。スピードに任せて行くだけでは勝てない難コースで、しかも船橋には南関東リーディングの森泰斗騎手をはじめとして腕利きがズラリ。

現在は期間限定騎乗や重賞スポット騎乗で北海道・岩手・金沢・名古屋・高知から、常時リーディング騎手が遠征してくる厳しい環境。川島正太郎騎手はその中で生き残るために、騎手としても700勝以上挙げた父や6000勝ジョッキー・石崎隆之元騎手の背中を必死に追いかけて頑張ってきた。

川島正行師の後に南関東リーディングトレーナーの座についた小久保師も、川島正太郎騎手の腕を見込んで多くの騎乗馬を用意している。勝ち鞍こそ兄・川島正一厩舎の所属馬で多く挙げているが、騎乗数は小久保厩舎の方が多い開催もあるくらい。リーディング上位厩舎からの信頼を勝ち得て、騎手としての立ち位置を固めている。

川島正太郎騎手は、「短距離戦の起承転結」を意識して勝ち鞍につなげている。ナイキマドリードで千メートルの船橋記念を4連覇して、同馬とは習志野きらっとスプリントも勝っている。今年の優駿スプリントでも小久保厩舎のトーセンボルガを10番人気で2着に持ってきて、「スプリントの名手」に育っている。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
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