先週のジャパンCは外国調教馬が来日せずしかも全て「マル父」の産駒で争われ、スワーヴリチャードが優勝して3億円の賞金をゲット。「マル父」という言葉は既に「死語」だけれど、専門紙の馬柱の種牡馬名の前に丸囲みで「父」という漢字が付いている馬が「マル父」。「父内国産馬」のことで、字義の通り父が日本生まれの馬。

オールドファンなら、中日新聞杯・愛知杯・カブトヤマ記念といった重賞の名を思い出すだろう。これらは全てかつての父内国産馬限定重賞で、内国産種牡馬が輸入種牡馬に押されていた頃に取られた保護政策の一環だった。自国の馬産を振興する目的で、こういった保護政策は韓国でも行われている。

日本の場合は内国産馬のレベルが上がったことと、パート1国になるのに出走条件として馬齢と性別以外の規制を無くさないといけないので発展的に解消された。かつてのマル父重賞の種牡馬欄には、現在と違っていい意味でのB級感が溢れていてなんとも味わい深かった。

2003年に廃止されたカブトヤマ記念の最後の出走欄には、トウカイテイオー・サッカーボーイ・アンバーシャダイ(3頭出し)・サクラチトセオー・タマモクロス・バンブーアトラス・フジキセキ・メジロマックイーン・ビワハヤヒデ・ウイニングチケット(2頭出し)・サクラホクトオーの名が見える。

10年も競馬をやっていれば全馬の現役時代の姿が目に浮かび、超一流の競走成績に比して苦戦している種牡馬成績も頭に浮かぶ。全馬がG1を勝っているスターホースだが、現代に直系のサイアーラインを残しているのはサンデーサイレンス産駒のフジキセキだけ。

今年のジャパンCの種牡馬欄は、ディープインパクト(4頭出し)・ハーツクライ(3頭出し)・キングカメハメハ(3頭出し)・ルーラーシップ(2頭出し)・ステイゴールド(2頭出し)・カンパニーが名を連ねた。勝手な解釈で申し訳ないが、かつてのB級感を出しているのはカンパニーだけ(母父マジックマイルズも味わい深い)。

中日新聞杯も愛知杯も出走条件を変えて現在にも名を残しているが、カブトヤマ記念はその名を残していない。現在福島千八の重賞は福島牝馬Sだが、カブトヤマは牡馬(戦前のダービー馬)だったのでレース名として残せなかった。種牡馬としても史上初のダービー父仔制覇を成し遂げた歴史的名馬だけに、レース名で顕彰して欲しい。

「2019年のジャパンCには外国調教馬が1頭も来日せず、全てマル父の産駒で争われる。」「15頭のマル父の背には、ワールドクラスの外国人ジョッキーが跨っている。」「そのジャパンCを勝ったのは24歳のアイルランド人騎手。」40年前の自分に、タイムマシンに乗った現在の自分がそう言ったら信じるだろうか?

信じないだろうなあ。外国調教馬が高額賞金でしかも招待レースなのに来日しなくなったのは、ひと言で言えば日本馬が強いから。高速馬場だとか円安だとかは、おそらく些末な理由に過ぎない。ホーリックスとオグリキャップが2分22秒2で走った頃から、ニ四の時計としては図抜けて速かった。それでも外国調教馬が勝っていた。

賞金に至っては勝たなきゃ貰えないわけで、せっかく来ても入着もないんじゃ足も遠のこうというもの。別に招待レースでなくても、チャンスがあると見れば外国調教馬はやって来る。大切なのは外国調教馬が来るかどうかではなく、常に扉が開かれているかということ。欧州にだって、自国調教馬だけで争う国際レースはたくさんある。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
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