新型コロナウィルスの影響で、東京オリンピックが延期となった。世界的にもケンタッキーダービーが延期、ドバイワールドCデイも中止。感染が急速に広がっているヨーロッパとヒューイットソン騎手が所属する南アフリカまで軒並み休止と、世界で競馬をやっているのはアメリカと日本と香港だけ。

無観客でも競馬が行なわれているだけありがたい話で、開催休止となれば我々のような専門紙はたちまち窮地に陥る。先週の競馬ブックに北海道の民間場外馬券売り場の窮状が取り上げられていたが、浅草や錦糸町ウインズの周辺もすっかり静かになってしまった。多くの人の商売に大きな影響が出ていることだろう。

そんな折に南関東で騎乗していたミシェル騎手の、短期免許延長不許可のニュースが報じられた。2ヶ月間の騎乗で28勝を挙げて勝率も10%を超え、勝利数も3ヶ月乗ったアラン・ムンロに並んでいる。ほぼ同じ期間騎乗したクリスチャン・デムーロの勝ち鞍25勝をも超えている、正真正銘の一流ジョッキー。

「美人すぎる」とか何とかの煽り文句も効いたのか、インターネット発売の普及で停滞気味だった本場の集客にも大きく貢献してくれた。そんな一流アスリートに「4月から私は失業者」なんてセリフ、言わせていいはずがない。鞭一本で世界を渡り歩ける職業を、行政側の細かなルールで縛りつけないで欲しい。

ミシェル騎手の母国フランスは、コロナウィルスの蔓延で危険な状況が続いている。安全のために日本に残る決断をしたミシェル騎手にとって、これは生存権に関わる問題。日本国内にいる人は国籍を問わず、その生存を保障することが行政本来の仕事である。それならば、取るべき措置も明白だと思うのだが。

「自国民にまともな休業補償もできない政府」などと政権を批判するつもりがない…わけでもないが(笑)、「4月から私は失業者」というセリフは効いた。競馬開催が休止となれば、自分を含めた多くの競馬関係者が開店休業状態になるからだ。同じ痛みを感じる者として、関係者からもこの決定への抗議をしてほしい。

前出のヒューイットソン騎手は騎乗開始から1ヶ月が経過したが、ドイツから来たミナリク騎手は短期免許期間が終了した。去就についての報道は目にしていないが、3度目の来日でかなりの親日家と聞いている。日本語での生活も問題なく、「地方競馬に来て馬券まで買っている」という未確認情報を他紙の記者から聞いたこともある。

もし母国に帰るのが大変なら、日本での暮らしを延長して欲しいと思う。それに際してはJRAじゃなくてもどこかの地方競馬で短期免許を取得して、ドイツリーディング4回の腕前をいかんなく発揮して欲しいもの。JRAでは芝に限らずダートでもしっかり実績を残しているので、地方競馬でも結果を残せるはず。

要は「調整ルームの功罪」でも触れたように、騎手をアスリートとして尊重しているかの問題。更に言えば、オリンピック延期までのドタバタでは、肝心のアスリートを置き去りにしているようにみえる場面も散見された。「アスリート・ファースト」は単なるお題目ではなく、一つ一つの行動のことだと改めて申し上げたい。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
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