◆デアリングバード5代血統表
デアリングバード5代血統表


●血統的特徴

デアリングバードの血統構成は父キングカメハメハ、母の父サンデーサイレンス、祖母の父ダンジグ Danzig というもので、総じて血統構成上はマイラー~中距離タイプと言える。

父のキングカメハメハは言わずと知れた名種牡馬。サイアーラインはキングマンボ→ミスタープロスペクターと現代主流の一つで、その上にヌレイエフ、トライマイベスト、そしてニジンスキーのラインを通じてノーザンダンサーを3本継続クロスしていること。これからノーザンダンサーを二本、三本とクロスしようかという状況の中で2001年に生まれたキングカメハメハは時代の先をいった印象が強い。ある意味で画期的だ。

そして、種牡馬として成功した要因はバックパサーとニジンスキーのニックスを内包し、これを発展させる形でニジンスキーのクロスを獲得すること。あるいはキングマンボの母ミエスク Miesque がリボー、プリンスキロ、トゥルビョンと欧州を代表する名血を内包することで、それそれの継続クロスから馬体の柔軟性と勝負根性を補強すること。さらにミスタープロスペクター自身のクロスの獲得。総じてこの3点が配合のポイントだが、もう一点、確認しておくべき点はサンデーサイレンス→ヘイローのラインを持たないことだ。したがって、日本の競馬サークルにあってはサンデー系牝馬との配合で自己を活用しやすい立ち位置にいる。


●配合の方向性

デアリングバード自身はサンデーサイレンが入るので配合的セオリーを踏んでおり、ある意味で完成形だ。そこでノーザンダンサー4本継続クロスの次なる方向性を探れば、その直仔へとクロス血脈を前進させることである。具体的には母系のダンジグか父系のニジンスキーが視野に入る。その他ではサンデーサイレンス自身のクロスだが、これが3×3では早すぎるが「4×3」なら了解しうるものだ。さらにキングカメハメハには多様な血脈が内包されているので、並行してこれらのクロスを引き出せれば合格点が付けられる。

候補として取り上げたのは以下の3頭。順序に大きな意味はないことを付記させていただく。


●具体的な相手

〇エビファネイア
エビファネイアと配合されるとサンデーサイレンス4×3のクロスが派生する。3×3はすでに競馬場で散見されるがまだ大物はいない。淡泊、単調、マイラー。中距離で切れ味を発揮するには「4×3」の具現と、これに相応のスパイスを加える必要がある。エビファネイアの場合だとヘイルトゥリーズン4本、プリンスキロ4本が注入されるので弾力性と粘り強さが補強される。加えて、この母においてはニジンスキー6×7、バックパサー7×7と頑健さと骨量を増す血脈のクロスも派生する。サラブレッドの配合はトータルな観点から施されるべきだが、シンボリクリスエス産駒のエビファネイアの存在はサンデーサイレンス系×キングカメハメハの配合馬の止揚にとって貴重な存在となり得るだろう。

◆桜花賞馬デアリングタクト5代血統表
デアリングタクト5代血統表


〇ベーカバド
ベーカバドはケープクロス Cape Cross 直仔の芝向きの中距離血脈だが、ネヴァーベンド5×4やリボーも内包するので、いい意味での気の強さ、勝負根性も期待できる。デアリングバードとの配合ではダンジグ4×4のクロスが引き出されるが、ノーザンダンサー5本、ニアークティック6本、ネイティヴダンサー6本、そしてアルマームード5本と、ノーザンダンサーを巡る「複合クロス」の形をとるのでダンジグ・クロスの単調さは気にならない。加えて、ミルリーフ→ネヴァーベンドの継続やリボー6×8のクロスも派生するので中距離対応へのバランスもいい。


〇ハービンジャー
ハービンジャーはダンジグ系でもデインヒルをくぐっているので馬力は十分だし、バックパサーとニジンスキーのニックスやリポー、サーアイヴァーなどの欧州血脈から芝中距離の本格派だ。デアリングバードと配合されると、まずはダンジグ4×4が派生する。同時にニジンスキー6×7も獲得するが、この点をどう判断すべきか少し悩まされる。ひと昔であればプリンスりーギフト、グレイソヴリン、ネヴァーセイダイなどのナスルーラ直仔を同時にクロスするようなものだが、しかし5代血統表の中ではなく世代的にも遠いので「嫌味感」は薄らぐ。その上にバックパサー→トムフール、ラウンドテーブル→プリンスキロの継続クロスやリボー系ヒズマジェスティ His Majesty=グロースターク Graustark5×7の同血馬クロスが派生する。この周縁血脈のバランスの良さで総合的に高い能力が獲得できる。

2015.10.8


◆青木義明【競馬一直線】
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