7月26日の札幌メインは大雪ハンデキャップ、そこにシベリウスという馬が出走してきた。オーナーは小説家で日本ペンクラブの会長も務めた浅田次郎氏、近6走は全て着外だったが昨年の7月28日に同じ札幌千七で2勝クラスを勝ち上がっている夏馬。追い切りで3歳未勝利馬を3秒追走して0秒4先着と、一変の条件は揃っていた。

浅田次郎氏は今のところシベリウスが出世頭だが、これまで30頭近くの競走馬を所有して主に美浦の小桧山厩舎に預託してきた。印象深いのはクレヨンという牝馬で、新馬戦はその日に川崎のテンセイフジでターコイズSに挑戦した酒井忍騎手が騎乗。合計21戦未勝利だったが、最後は南関東で走ったのでよく覚えている。

浅田次郎氏の著作は名作揃いで、中でも「草原からの使者」(同作を表題にした短編集に所収)は競馬ファン必見の佳作。競馬ファンの長男に薦めたらハマってしまい、今では暇さえあれば浅田次郎氏の作品を読み漁っている。近作のお勧めは「流人道中記」、読売新聞で完結して上下巻が出版されたばかりだそうだ。

「草原からの使者」の舞台は1973年5月27日、ハイセイコーが単勝支持率66%を集めたダービーの当日。自分にとっては実際に体験したことだけれど、1976年生まれの長男にとっては歴史上の一日。曰く「その日の府中にいたような気になった。」という感想を漏らしたくらいの筆致を、ぜひご堪能いただきたい。

話を戻してかのシベリウス、高名な作曲家の名を冠したこの馬は昨年だけでなく2017年にも7月に勝ち鞍を挙げている。追い切りの短評も「末の伸び素晴らしい」とあったので馬券を買ったら、いい脚で伸びてきて2着。夏男ぶりを三たび発揮して当たり馬券をプレゼントしてくれた。

当代のシベリウスは実は3代目で、初代は1975年に生まれたスピードシンボリ産駒の牝馬、ミスター競馬と言われた野平祐二師が管理した。オーナーは和田正輔氏(シンボリ牧場の遠縁で、息子は和田正道元調教師・孫は和田正一郎師)で、勝負服は浅田次郎氏と同じ星散らし(袖の柄が違うけれどとてもよく似ている)。

2代目シベリウスの生産者は茨城県の栗山道郎さん、芦毛のダービー馬・ウィナーズサークルを生産した栗山牧場の一族。ウィナーズサークルの甥にあたるクールアイバーは大井の金盃を制していて、自分の馬主名義を繋ぐために南関東で馬を共有した仲でもある。シベリウスが繋ぐ縁を辿りつつ原稿を書いた、日曜の夕刻だった。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
http://bit.ly/17MDXV7

◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp